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お題サイト 殯:www5.pf-x.net/~ppqq/k/
えのきづれいじろう、で9のお題をいただきました。
第三弾「き」より『気紛れな遮光』
※呑まれて傘下の続きとなります。
チカチカと視界を占める光。
それはまるで夏の夜の虫のようにただ只管に記憶に焼き付けられて。
眩しくてたまらない、と。
その男は十二分に不機嫌な声で呟きというにはあまりに通りの良い声を上げた。
親類縁者が全て死に絶えたかのような不吉な表情の古書肆――中禅寺――は読み掛けの本から視線だけを上げて少し離れた場で寝転がる榎木津を静かに見下ろす。
「そんなに頻繁かい」
「気づけば光っている。虫でもあるまいし、何が楽しいんだか」
長い両手足をのびのびと伸ばして榎木津は喚いた。寄せられた眉の所為か懊悩の表情にもとれるその表情は、大方このところ頻繁に『視せられて』しまう光景を思い出してのことなのだろう。
「しかしだね、その太陽の記憶はいつもあの窓から、なのだろう。だとすればいずれにせよ面倒な事になりそうだ」
「京極、何が言いたいんだ?」
口を挿めばさも面倒と言いたげな溜息とともに中禅寺は横目で僕を見た。
その妙に凄みのある視線にも、慣れていれば狼狽することはない、僕は重ねて問いかけた。
「益田君の趣味が野鳥観察でも太陽観察でも構わないが、それと場所はそれ程関係ないような気がするんだが」
「純粋にそれが趣味ならね。その辺りを飛ぶ雀や烏だって眺めていれば興味深いと思う人はそりゃあいるだろう」
ちらとまた中禅寺は榎木津を見下ろす。
榎木津は目を閉じたまま眠っているかのように動かない。溜息に僕が視線を戻せば、眉をよせて中禅寺は僕へ向き直っていた。
「益田君は榎さんの周りにいる人間の誰よりも特異な存在なのだよ」
重々しい口から紡がれた言葉に僕も眉を寄せて、ただし目の前の男とは違って理解に及ばないという風に首を傾げて見せる。
「そんな話、初めて聞くぞ。少々軽薄なところはあるが普通の若者じゃあないか」
「あのね関口君、僕は何も特殊な能力があるとか性格に問題があるとか、そう云う事を言ってるんじゃないんだよ。君は榎さんを嫌ってはいないだろうが、だからと小説稼業をすっぱりやめて煙たがられても虐げられてもあの探偵社に押し掛ける根性はあるかい?」
ああ、納得から胡乱な声が上がった。わざわざ説明しないと理解に至らない不足な僕に対して、中禅寺は呆れの意を込めた眼差しを送ってくる。
「はじめは純粋に興味や好奇心や、純粋な羨望の念だったのだろうがね。さて今はどうなのかなあ」
「あの馬鹿で愚かでどうしようもない奴が何を考えてようとどうだっていい!問題なのはあの太陽だ」
それまで静かだった榎木津が寝がえりを打って強く声を発した。
縁側へ向いて横寝してしまった彼の表情は伺えない。だから、その声が何かを誤魔化すための物に聞こえたのは、確認の仕様がなかった。
「榎さんはそれでいいのかい」
「僕が動いてやる義理はない」
僕にはとんと話の見えない会話が流れていく。表層を滑って行く音は心地が良い。
空間から排除されることもなく、無理に組み込まれることのない空間は、愚鈍な自分にとても優しい。
「なら、記憶の上書きしかないだろう。より強く根深いイメエジを彼に見せるしかない」
その代り、次はそのイメエジに悩まされる覚悟は要るね、と中禅寺は平坦な声で言った。榎木津は返事をせずに縁側を向いたまま。
「どちらにせよ、あんたが動かないと視えるものも動かないだろうね。今日も、もしかしなくても上書きされているんだろう」
初夏の陽射しが庭に落ちて、木陰との陰影を強調している。
喉の奥で潰すような唸り声が聞こえたかと思うと途端に栗が爆ぜるような動きで榎木津が起き上がった。
「一発くらい殴らないと気がすまない!そうだ、蹴りもつけてやろう!」
「そうしたまえ、いっそ荒療治も彼のためかもしれない」
言葉ほどは不機嫌には見えない榎木津は、面倒だ馬鹿馬鹿しいなどと叫びながら暇の挨拶もせずに部屋から出て行ってしまった。
後に残された僕はしばらく榎木津の出て行った開かれっぱなしの襖を眺めていたが、ふと耳に届く紙の音に振り返る。
中禅寺はいったん中断していた読書をようやく再開したらしく、口元を引き結んで活字を追っている。
静寂の訪れた室内で、僕は数分とも数十分ともつかぬ時間を思考に費やしてみたが、解けていく脳はたった一つの結論にさえたどりつかない。
「なあ京極堂、結局、益田君と榎さんは何を揉めてたんだ?」
「…正しくはまだ揉めてはいない。今から揉めるんだろうな」
君にはわからなくていいのだ、と。
それは説明を面倒がるとか煙に巻くためではなく、ただ彼の判断から知っておくに足ることではないと導き出された結果だったらしい。
本当はそれで納得はしたくなかったけれど、ここで無理に問いただしていい目にあえた例はない。
冷えた出がらしの入った湯呑を引きよせ、僕は数秒だけ退室直前の榎木津を思い出していた。
「榎さんは、照れてたように見えたなあ」
深く考えずつぶやいた言葉に中禅寺が意外そうな眼を僕に向けた事を、中庭の木々を照らす陽光を眺めていた僕が気づくことはなかった。
何だか文章として破綻しています、すみません…
文章を作るときは眠くない時に!ですよね……
しかし出来るだけ2,3日に一本くらいの割合で小説を書きたいので無理してみました。
小説のない日には過去のイラストのログが続く限りはそれで穴埋めしたいな、とか…
この更新速度がいつまでもつか…たぶん8月までも持たないと思いますorz
後日、もしかしたら書き直すかも知れませんがこれにてとりあえず「き」終了。
それはまるで夏の夜の虫のようにただ只管に記憶に焼き付けられて。
眩しくてたまらない、と。
その男は十二分に不機嫌な声で呟きというにはあまりに通りの良い声を上げた。
親類縁者が全て死に絶えたかのような不吉な表情の古書肆――中禅寺――は読み掛けの本から視線だけを上げて少し離れた場で寝転がる榎木津を静かに見下ろす。
「そんなに頻繁かい」
「気づけば光っている。虫でもあるまいし、何が楽しいんだか」
長い両手足をのびのびと伸ばして榎木津は喚いた。寄せられた眉の所為か懊悩の表情にもとれるその表情は、大方このところ頻繁に『視せられて』しまう光景を思い出してのことなのだろう。
「しかしだね、その太陽の記憶はいつもあの窓から、なのだろう。だとすればいずれにせよ面倒な事になりそうだ」
「京極、何が言いたいんだ?」
口を挿めばさも面倒と言いたげな溜息とともに中禅寺は横目で僕を見た。
その妙に凄みのある視線にも、慣れていれば狼狽することはない、僕は重ねて問いかけた。
「益田君の趣味が野鳥観察でも太陽観察でも構わないが、それと場所はそれ程関係ないような気がするんだが」
「純粋にそれが趣味ならね。その辺りを飛ぶ雀や烏だって眺めていれば興味深いと思う人はそりゃあいるだろう」
ちらとまた中禅寺は榎木津を見下ろす。
榎木津は目を閉じたまま眠っているかのように動かない。溜息に僕が視線を戻せば、眉をよせて中禅寺は僕へ向き直っていた。
「益田君は榎さんの周りにいる人間の誰よりも特異な存在なのだよ」
重々しい口から紡がれた言葉に僕も眉を寄せて、ただし目の前の男とは違って理解に及ばないという風に首を傾げて見せる。
「そんな話、初めて聞くぞ。少々軽薄なところはあるが普通の若者じゃあないか」
「あのね関口君、僕は何も特殊な能力があるとか性格に問題があるとか、そう云う事を言ってるんじゃないんだよ。君は榎さんを嫌ってはいないだろうが、だからと小説稼業をすっぱりやめて煙たがられても虐げられてもあの探偵社に押し掛ける根性はあるかい?」
ああ、納得から胡乱な声が上がった。わざわざ説明しないと理解に至らない不足な僕に対して、中禅寺は呆れの意を込めた眼差しを送ってくる。
「はじめは純粋に興味や好奇心や、純粋な羨望の念だったのだろうがね。さて今はどうなのかなあ」
「あの馬鹿で愚かでどうしようもない奴が何を考えてようとどうだっていい!問題なのはあの太陽だ」
それまで静かだった榎木津が寝がえりを打って強く声を発した。
縁側へ向いて横寝してしまった彼の表情は伺えない。だから、その声が何かを誤魔化すための物に聞こえたのは、確認の仕様がなかった。
「榎さんはそれでいいのかい」
「僕が動いてやる義理はない」
僕にはとんと話の見えない会話が流れていく。表層を滑って行く音は心地が良い。
空間から排除されることもなく、無理に組み込まれることのない空間は、愚鈍な自分にとても優しい。
「なら、記憶の上書きしかないだろう。より強く根深いイメエジを彼に見せるしかない」
その代り、次はそのイメエジに悩まされる覚悟は要るね、と中禅寺は平坦な声で言った。榎木津は返事をせずに縁側を向いたまま。
「どちらにせよ、あんたが動かないと視えるものも動かないだろうね。今日も、もしかしなくても上書きされているんだろう」
初夏の陽射しが庭に落ちて、木陰との陰影を強調している。
喉の奥で潰すような唸り声が聞こえたかと思うと途端に栗が爆ぜるような動きで榎木津が起き上がった。
「一発くらい殴らないと気がすまない!そうだ、蹴りもつけてやろう!」
「そうしたまえ、いっそ荒療治も彼のためかもしれない」
言葉ほどは不機嫌には見えない榎木津は、面倒だ馬鹿馬鹿しいなどと叫びながら暇の挨拶もせずに部屋から出て行ってしまった。
後に残された僕はしばらく榎木津の出て行った開かれっぱなしの襖を眺めていたが、ふと耳に届く紙の音に振り返る。
中禅寺はいったん中断していた読書をようやく再開したらしく、口元を引き結んで活字を追っている。
静寂の訪れた室内で、僕は数分とも数十分ともつかぬ時間を思考に費やしてみたが、解けていく脳はたった一つの結論にさえたどりつかない。
「なあ京極堂、結局、益田君と榎さんは何を揉めてたんだ?」
「…正しくはまだ揉めてはいない。今から揉めるんだろうな」
君にはわからなくていいのだ、と。
それは説明を面倒がるとか煙に巻くためではなく、ただ彼の判断から知っておくに足ることではないと導き出された結果だったらしい。
本当はそれで納得はしたくなかったけれど、ここで無理に問いただしていい目にあえた例はない。
冷えた出がらしの入った湯呑を引きよせ、僕は数秒だけ退室直前の榎木津を思い出していた。
「榎さんは、照れてたように見えたなあ」
深く考えずつぶやいた言葉に中禅寺が意外そうな眼を僕に向けた事を、中庭の木々を照らす陽光を眺めていた僕が気づくことはなかった。
何だか文章として破綻しています、すみません…
文章を作るときは眠くない時に!ですよね……
しかし出来るだけ2,3日に一本くらいの割合で小説を書きたいので無理してみました。
小説のない日には過去のイラストのログが続く限りはそれで穴埋めしたいな、とか…
この更新速度がいつまでもつか…たぶん8月までも持たないと思いますorz
後日、もしかしたら書き直すかも知れませんがこれにてとりあえず「き」終了。
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