主に小説、時々絵更新予定の腐向けブログサイト。
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昔から、良いことなんて特になかった。
誰か他人にとって便利でも、自分には不便でしかない。
視えるのは記憶の断片。それは良いものも悪いものも、見たいも見たくないも関わらず。
怒涛のように流れ込む記憶にはこちらの感情も精神も関与できず、ただ許容量を超える前に、どうにかしてこの情報を吐いて落として潰してしまわなければ身が持たない。
僕にとって多くの他人は僕を殺そうとしてくる兵器のようなものだ。
並ぶ眼窩は、僕の脳味噌に向けられた銃口の様。
全ての眼孔に詰められたたくさんの記憶が、撃鉄を起こして。
「あっれェ、大将じゃないですか」
呑気な声をかけられて、振り返る。
其処には声に負けず呑気な顔の男。
「なんだ鳥ちゃんか、奇遇だね」
写真機を肩から提げている青年は、人懐っこい笑みを浮かべて近づいてきた。
夏の日差しの中長く歩いていたのだろうか、たらたらと汗が流れているが、表情は涼しげだ。
きょろり、と左右を見渡してのち、犬のような丸い目が向けられる。
「お一人ですか、ははあ、師匠の所ですね?」
「そう。君は今からか」
親しい者の中では珍しく自分より僅かに高い身長の男を見やれば、それこそ知り合いの中でも珍しい、邪気も翳もない笑顔を浮かべる表情が視界に入る。
「ハァ、さっき先生のお家に伺ったらですね、師匠のところへ出かけたようだと奥方が」
玄関口に立つ雪絵が見えた。
ふうん、と答えると青年は少しこちらの様子を窺うように口を閉じて。
そして、雪絵の代わりに現れたイメエジに眉を寄せる。
薄汚れた居酒屋で、何かの肴と酒、困ったようなコケシと机に突っ伏して動かない―――
「酔っぱらいバカオロカ」
「うへぇ、勝手に視ちゃいけませんよう」
誤魔化すように笑って手の平をぶんぶんと顔の前で振る、そんな事をしたって関係ない。
視ようとして視るわけでもなければ、視るなと言われて止まるものでもないのだ。
「其れはいつもそんな風かね」
「ああ、ええと。あそこまで潰れるこたぁ滅多にありませんけどね。あの日は」
気まずげに視線が外されて、イメエジは動き始める。
酒の消費が進むにつれて段々と気が高ぶっていったらしい記憶の中の男は、不自然な程に明るい笑みをふとした瞬間に消して。
「気持ち悪いなあ、どうして泣きだすんだ。鳥ちゃんやコケシ君がいじめたのか?」
そんな訳ないと解っていながらも呆れたように口にした言葉に、慌てたように首を振る。
母親にあらぬ疑いをかけられた少年のように必死だ。
「まさか。僕らにもよく分かりませんでしたよ、それまでは輪の中心になって喋ってましたからね」
もう一度、ちら、と伺うような眼差し。
気は長くない。少し苛立ちを含ませて口を開いた。
「さっきから鳥ちゃんは後ろめたそうだなあ、悪い事をしているなら露見する前に自白してしまいなさい」
「うへえ、僕が悪い事をする手合いに見えますか?…後ろめたい、というなら…でも、そうなのかなァ」
唇を尖らせてうんうん唸る。当人にとっては真面目に考えているのかもしれないが、それは少し滑稽な表情だった。
そんなこちらの思考を読んだわけではないだろうが、意を決したように顔をあげた男は僅かに顔を近づけ、少し声を落として話し始める。
「大将のご覧になったとおり、僕たちはたまに三人集まって日頃の愚痴をこぼしたり明日の日本を嘆いたり、
マアおおよそ意味のない下らん話を肴に酒を酌み交わしてるんですがね。先週はその話題ってェのが、それぞれの上司の事になりまして。…ああ、いや、益田さんは別に大将の悪口は言ってませんでしたよ。ただ…」
「なんだ」
「僕達の話はね、揶揄ったり冷やかしたりしてたんですよ、益田さんも。それが探偵先生の所はどうなんですか、って青木さんが話を振った途端に、急にですよ。こう…ぼたぼたって涙がですね」
指が目からあふれる涙を表現する。それに重なって表情をなくして眦から水を溢れさせる愚か者を視た。
その泣きっぷりは酒の所為か、よほど大きな感情の揺れなのか、こんな涙は事務所で見たことはない。
あるとしても精々が情けない声で場を誤魔化す卑怯な嘘泣きばかりだ。
「流石に青木さんも僕も慌てましてですね、本泣きは初めて見ましたから。どうしたんです、何があったんですか、って、二人で声をかけたんですよ。そうしたら益田さん、何もない、どうすることもできないとか何とか…最後には」
また、ちら、と。
その視線は何を意味しているのだろう。
逡巡している空気と共に、涙をためて虚ろに顔を上げる愚か者のイメエジ。
その唇がゆっくりと動いて――
「『太陽なんて見えなけりゃ良かった』 と」
嗚呼。
遂に記憶が引き金を引いた。
とても中途半端なところですが「鮨詰状態の眼窩」終了です。
このあと木場の旦那や青木刑事を出したかったのですが。
今さっき気づいたのですが、このお題を配布してらっしゃった『殯』様のお宅がアカウント凍結状態になっておりまして…
そして末っ子何を思ったかお題を毎回殯様宅に伺ってひとつづつ落としてきてましたので、残り「れいじろう」のお題を覚えておりません(www)
という訳で、お題シリーズっぽい展開はここまで、後は普通に終りまで引っ張っていきたいと思います。。。
とか言いましたが、サイト様のアカウントは凍結しておりましたが広告が強制表示されているだけで下の方にコンテンツがありましたwwwwww
続きます!(2008.08.04追記)
最後までおつきあいくださりありがとうございました!
誰か他人にとって便利でも、自分には不便でしかない。
視えるのは記憶の断片。それは良いものも悪いものも、見たいも見たくないも関わらず。
怒涛のように流れ込む記憶にはこちらの感情も精神も関与できず、ただ許容量を超える前に、どうにかしてこの情報を吐いて落として潰してしまわなければ身が持たない。
僕にとって多くの他人は僕を殺そうとしてくる兵器のようなものだ。
並ぶ眼窩は、僕の脳味噌に向けられた銃口の様。
全ての眼孔に詰められたたくさんの記憶が、撃鉄を起こして。
「あっれェ、大将じゃないですか」
呑気な声をかけられて、振り返る。
其処には声に負けず呑気な顔の男。
「なんだ鳥ちゃんか、奇遇だね」
写真機を肩から提げている青年は、人懐っこい笑みを浮かべて近づいてきた。
夏の日差しの中長く歩いていたのだろうか、たらたらと汗が流れているが、表情は涼しげだ。
きょろり、と左右を見渡してのち、犬のような丸い目が向けられる。
「お一人ですか、ははあ、師匠の所ですね?」
「そう。君は今からか」
親しい者の中では珍しく自分より僅かに高い身長の男を見やれば、それこそ知り合いの中でも珍しい、邪気も翳もない笑顔を浮かべる表情が視界に入る。
「ハァ、さっき先生のお家に伺ったらですね、師匠のところへ出かけたようだと奥方が」
玄関口に立つ雪絵が見えた。
ふうん、と答えると青年は少しこちらの様子を窺うように口を閉じて。
そして、雪絵の代わりに現れたイメエジに眉を寄せる。
薄汚れた居酒屋で、何かの肴と酒、困ったようなコケシと机に突っ伏して動かない―――
「酔っぱらいバカオロカ」
「うへぇ、勝手に視ちゃいけませんよう」
誤魔化すように笑って手の平をぶんぶんと顔の前で振る、そんな事をしたって関係ない。
視ようとして視るわけでもなければ、視るなと言われて止まるものでもないのだ。
「其れはいつもそんな風かね」
「ああ、ええと。あそこまで潰れるこたぁ滅多にありませんけどね。あの日は」
気まずげに視線が外されて、イメエジは動き始める。
酒の消費が進むにつれて段々と気が高ぶっていったらしい記憶の中の男は、不自然な程に明るい笑みをふとした瞬間に消して。
「気持ち悪いなあ、どうして泣きだすんだ。鳥ちゃんやコケシ君がいじめたのか?」
そんな訳ないと解っていながらも呆れたように口にした言葉に、慌てたように首を振る。
母親にあらぬ疑いをかけられた少年のように必死だ。
「まさか。僕らにもよく分かりませんでしたよ、それまでは輪の中心になって喋ってましたからね」
もう一度、ちら、と伺うような眼差し。
気は長くない。少し苛立ちを含ませて口を開いた。
「さっきから鳥ちゃんは後ろめたそうだなあ、悪い事をしているなら露見する前に自白してしまいなさい」
「うへえ、僕が悪い事をする手合いに見えますか?…後ろめたい、というなら…でも、そうなのかなァ」
唇を尖らせてうんうん唸る。当人にとっては真面目に考えているのかもしれないが、それは少し滑稽な表情だった。
そんなこちらの思考を読んだわけではないだろうが、意を決したように顔をあげた男は僅かに顔を近づけ、少し声を落として話し始める。
「大将のご覧になったとおり、僕たちはたまに三人集まって日頃の愚痴をこぼしたり明日の日本を嘆いたり、
マアおおよそ意味のない下らん話を肴に酒を酌み交わしてるんですがね。先週はその話題ってェのが、それぞれの上司の事になりまして。…ああ、いや、益田さんは別に大将の悪口は言ってませんでしたよ。ただ…」
「なんだ」
「僕達の話はね、揶揄ったり冷やかしたりしてたんですよ、益田さんも。それが探偵先生の所はどうなんですか、って青木さんが話を振った途端に、急にですよ。こう…ぼたぼたって涙がですね」
指が目からあふれる涙を表現する。それに重なって表情をなくして眦から水を溢れさせる愚か者を視た。
その泣きっぷりは酒の所為か、よほど大きな感情の揺れなのか、こんな涙は事務所で見たことはない。
あるとしても精々が情けない声で場を誤魔化す卑怯な嘘泣きばかりだ。
「流石に青木さんも僕も慌てましてですね、本泣きは初めて見ましたから。どうしたんです、何があったんですか、って、二人で声をかけたんですよ。そうしたら益田さん、何もない、どうすることもできないとか何とか…最後には」
また、ちら、と。
その視線は何を意味しているのだろう。
逡巡している空気と共に、涙をためて虚ろに顔を上げる愚か者のイメエジ。
その唇がゆっくりと動いて――
「『太陽なんて見えなけりゃ良かった』 と」
嗚呼。
遂に記憶が引き金を引いた。
とても中途半端なところですが「鮨詰状態の眼窩」終了です。
このあと木場の旦那や青木刑事を出したかったのですが。
今さっき気づいたのですが、このお題を配布してらっしゃった『殯』様のお宅がアカウント凍結状態になっておりまして…
そして末っ子何を思ったかお題を毎回殯様宅に伺ってひとつづつ落としてきてましたので、残り「れいじろう」のお題を覚えておりません(www)
という訳で、お題シリーズっぽい展開はここまで、後は普通に終りまで引っ張っていきたいと思います。。。
とか言いましたが、サイト様のアカウントは凍結しておりましたが広告が強制表示されているだけで下の方にコンテンツがありましたwwwwww
続きます!(2008.08.04追記)
最後までおつきあいくださりありがとうございました!
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