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どこまでも百合くさいにゃんにゃんコンビです。
イラストあり注意
「榎木津さんは、カマが嫌いなんじゃなかったんですか」
俯いて唇を尖らせて、僕は責めるように呟いた。
見えないけれど、榎木津さんはきっと首を傾げて不思議そうな眼差しを僕に向けているはずだ。
「面白いカマなら好きかもしれないなあ、僕に迫ってくるカマは嫌い」
「………じゃあ、この状況は何ですか」
重ねて責める口調になってしまうのは致し方ないと思う。
僕は榎木津さんの腕の中に閉じ込められていて、体温どころか心臓の音まで伝わってくる距離に顔があげられないのだから。
それなのに、榎木津さんは背中にまわした腕を腰元へおろしてそのまま指を組む。自然と腰を引かれる形になって、下半身が密着する羞恥に顔が熱くなるが、慌てて胸を反らせ顔だけでも離そうと榎木津の胸元に手を添えて距離を置く。
「お前はカマだったのか?いつも違うと云ってたくせに、嘘つきだなあ」
「ち、がいますよ!カマじゃありません、…でも、榎木津さんが好きですから、僕ァ」
思わず口をついた告白に榎木津さんが笑う気配、そのまま頭頂部に鼻先を押しつけられる。
神の行いに予想なんてできるはずもなく、うひゃあ、と上ずった声を上げてしまって、胸元に添えていた手が榎木津さんの来ている襦袢を所在無げに掴む。
「お前は泣き虫だし弱いしひょろひょろ細っこいし、カマに近いけどね。好きじゃないものは傍に置かないよ、僕は」
囁かれるたびに触れ合う体から優しい震動が伝わってくる。
榎木津さんは僕の頭の上で何かもぞもぞ動かしている。もしかしなくても、唇で髪を食まれているのだろうか…まるで猿の親子のようだ。
「さて、そうしたらマスヤマ、くびだ」
「え」
頭の上から榎木津さんが顔を上げると同時に降ってきた言葉に、耳を疑って顔を上げる。
思ったよりも至近に寄った美しい顔にこんな状況にも関わらず見惚れてしまいながら、先ほどの言葉を繰り返す。
「くび…ですか」
「そうだよ、いちいち聞き返さなくてもそれぐらい分かるだろうに」
呆れた表情で返されて、その明るい声に死刑宣告でもされたかのような顔を僕はしていたと思う。
やはり、男を好きだという変態は嫌いなのだ。だから僕は傍に置いてもらえなくなる。
それでも、彼の傍にいられなくなるくらいなら、この感情なんていくらでも隠して誤魔化して煙に巻いてやるのに。言葉にしてしまった今じゃあもう手遅れなのだろうか。
ぶわ、と涙があふれた。
「うわあ、瞬間芸だな。なんで泣くんだマスオロカ」
「だ、だって…榎木津さんクビって」
一瞬で臨界点を突破した涙腺は次から次へ水分を放出して、それでもつかんだ襦袢を離せずにただ顔を歪めて涙は零れるまま。
「ごめんな、さい、もう好きだなんてッ…言いませんからァ。ヒッ…ここに居させて下さいよォ」
しばらくは目を瞬かせながらそんな僕の様子を見つめていた榎木津さんが、大仰な溜息をついて腰を抱きよせていた腕を解いた。
ああ、離れろという合図なのだろうか。解っていても従いたくない。掴んだ襦袢を引っ張って、そこへ額を押しつける。
しゃくり上げる声まで混ざってきてどこまでもみっともない僕の頬に、そっと手が添えられた。
「馬鹿。ばかばかバァカ。解雇じゃないよバカオロカ」
「ぇあ」
両頬を挿みこまれて無理やりに上向かされ、上ずった泣き声が途切れる。一瞬の隙をついて唇が重なって、僕はぽかんと口も目も開きっぱなしで榎木津さんを見つめた。
眉を寄せて呆れた奴めとバカにする榎木津さんの、眼差しはとても温かく和らいでいて。
「僕の云ったくびは、こっち」
頬から滑り降りていく掌が僕の首筋を辿る。
「じゃ、じゃあ…僕の勘違い、ですか」
「そう。愚かなお前の馬鹿な早とちり」
暖かい掌が首筋を何度も撫でていく。
相変わらず意図は解らないままだったけれど、たとえ首を差し出せとかそういう物騒な命令だとしても彼の傍にいられるなら解雇なんかよりはよほどマシに思えた。
「何であの流れでそう繋がるかね、脈絡がないよマスヤマ」
「あ…アンタが脈絡を説きますか、大体首だって別に脈絡は、あわぁぁぁ」
言葉の途中で声が裏返る。其れこそ何の脈絡もなく、首筋に榎木津さんが顔を埋めてきたからだ。
吐息がくすぐったくて、唇の柔らかさがむず痒くて、何をされているのかチクリとした痛みも感じる。
時間にすればほんの十数秒だったけれど、榎木津さんが次に顔を上げるまで僕は呼吸も忘れて身を固めていた。
「え、榎木津さん、何を…」
「――よし。フゥン、思ったより簡単じゃないか」
先ほど唇を押しつけていた部分を人差し指でなぞって、榎木津さんは満足そうに笑った。
―――――もしかして。
「所有の証、らしいぞ。鏡で見ておいで」
肩を掴んでくるりと体を反転させられて、洗面場へと背を押された。
覚束ない足取りでそうっと覗き込んだ鏡の中には。
涙の跡も拭かずに首筋に赤い鬱血を付けた男が、顔を真っ赤にして立ちすくんでいた。
思いつきラブ。ヤマもオチも意味もないです。末っ子はヤオイ専門文士ですwww
榎さんにツンがありませんね、デッレデレです。たまにはいいと思います。
しかし末っ子は何をどう頑張っても百合くさいというか、受け子達がにゃんにゃんしているようにしか見えません。
好物ですが、もっとこう…イケメンな攻めとか男らしいカップルが書きたいです安西先生。。。
そして最後にイメージイラスト。
ぼろ泣きマスヤマ
彼は前髪の所為か顔が長くなりがちでちょっと怖いですね。
得意げな榎さん
この落書き描いてからこの話書こうと決めて益田君も描いてみたという。
完全に自分絵ですが、美形美形と口ずさみながら必死に描いてる時より自然に見える罠。