主に小説、時々絵更新予定の腐向けブログサイト。
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たまには違うカップリングも。
叫び出したい程に甘いです。
「恋なんてなァ楽しくないなら意味がないですよ」
アルコールで気の大きくなったらしい益田が、顔を赤くして居酒屋の卓上に拳を叩きつけた。
その大きな声と思ったより店内に強く響いた殴打音に、未だ素面に近い青木は益田の言葉に返事をするでもなく店主に目を向けて身内の騒々しさを軽く頭を下げることで謝った。
そんな青木の気配りには気づかない益田が、それでも自分の話を聞いてもらえていないことは気づいたらしく、卓をはさんで向かいに座る男の腕を掴んで構われたがる子供のように揺すっている。
「聞いてますか青木さあん、恋ってのはですねェ、遠くからそっと見つめるだけで幸せになるとか、部屋で一人想い人の事を考えて身悶えるとか、そう云う経過にこそ楽しみがあるんですよう、解りますかあ」
「そうだねぇ、学生の頃にはそういう青い思い出もあったかな」
半ばうんざりとした口調で返しても、そうでしょうそうでしょうと満足そうにうなずく益田はいつもより酒の周りが早いような、否、明らかに早すぎる。
「つまり、若さなんですよ恋は。若いからエネルギイに満ちてて、気ばかり大きくなっているから現実的なことが考えられなくて、だから懸想が甘くて楽しいんですよ」
まるでそれを悪い事とでも云うように唇を尖らせて、箸で皿の淵をカチカチと叩きながら益田は唸る。
行儀が悪いよ益田さん、と窘めると子供のようにじとりと上目使いに見つめられた。
なんだかその表情は見たことがある気がして、ああそうだ、幼い頃実家で飼っていた柴犬が散歩に連れて行って欲しそうな時の瞳に似ている、と思い当って青木は思わず浮かぶ笑みに目を細めた。
「何だい、ちゃんと話は聞いてるだろう。そう不服そうな顔をしないでくれよ」
「だって青木さん、全然ノッてくれない」
当たり前だ。
片や完全に出来上がっている酔っぱらい、片や未だアルコールに麻痺していない素面。鳥口あたりなら十分に共に盛り上がることもできただろうし、あの榎木津ならば上をいく躁にこの酔いも醒めてしまう事だろう。
しかし青木は真面目過ぎる節があると事ある毎に様々な人から宣告されるほど、要は野暮なのだ。
「君の恋愛観を聞かされてもね。君の言だと楽しくなければ恋愛じゃないんだろう」
「違いますよゥ、恋愛じゃなくって、恋です、恋。愛はまた別なんですってば」
人差し指を振りながら益田がわざと眉をしかめて怒っているような表情を作る。
「恋は、『自分だけ』楽しいんです。相手に伝わっていようといまいと関係無いんですよ。だって懸想している事実が大切なんですから。好きである事、それが相手に受け入れられたらまた色々話は変わってきますけどね、つまりは只の自己陶酔なんですよ、だから若くないとそこまで楽観的に構えてられない」
ケケケ、とお馴染みの薄気味悪い笑い声を立てる益田は、その眼差しだけは冷めている様に見えて、青木はオヤと目を瞬かせた。
矢張り益田はそれ程酔ってはいないのかもしれない。それならば、青木は卓に肩肘をついて僅かに身を乗り出すように傾けた。
「…それなら、愛は君の中でどういうものなんだい」
水を向ければ、益田の瞳が驚いたように青木をとらえた。すぐに浮かべられる笑みには居心地の悪さすら覚えて、青木は自ら前に出ていた体を戻して背もたれに預け直す。
「愛ですか、愛はですねェ、一方通行の依存と執着ですね」
「なんだ、恋と変わらないじゃないか」
勿体ぶった割に肩透かしを食ったような気分で青木が呆れた声を上げると、全然違いますよゥ、と益田は頬を膨らませて拗ねた。良い年した男が見苦しいと思ったが、見過ごすのも優しさと何も云わずにおいた。
「いいですか、恋は自己陶酔ですよ。身近な存在じゃなくても、それこそ相手が本当は存在していなくたって出来るんです、映画に出てる美人女優だとか、物語の王子様だとか」
成程、恋に恋をするとも言うし、確かにそこには自分の妄想の中だけの恋人、さぞかし楽しいのだろう。…興味は持てないが。
青木の微妙な表情に気づいた益田はわざとらしく口元を揃えた指先で隠すように笑って吊り気味の目を細めた。
「青木さんには似合わないなあ、夢見るお姫様って柄でもなさそうだし」
「勘弁してくれよ、気持ち悪いなあ」
すっかり温くなった冷奴に箸を突き刺して、その白い肌が崩れる様を見下ろしながら青木は溜息をつく。益田が酔った振りまでして突然始めた弁舌に、正直の所戸惑っていた。
相談したいことがある風でもなく、ただつらつらと己の恋愛観を語る男に、一体どういう顔をし続ければいいというのだろうか。
「話を元に戻しますとね、愛は依存と執着なんです、相手が居ないと成り立たない。依存ってェのはこの場合その存在があるという事が自分の基盤に深く浸透しちゃってる、しかも執着までしてしまうものだから相手に及ぼす影響もあるんですよ」
「しかし、愛とは無償の好意とか説いてる人もいるだろう」
「アッハハ、ないない。有り得ないですって。無償って、見返りを求めないとか、まあただ想い続けるだけってことですよね?そりゃあ恋です、僕の理屈から言うとですがね」
益田は興に乗ってきたらしく、当初の気だるげに語尾を伸ばす口調も忘れ完全に素面の瞳でコップに残っていた安酒を煽った。
青木はと言えばそんな益田の変わり身に口をへの字にして黙したまま、再び益田の独壇場へと引きずり込まれていく。
「喋れるのに黙ったまんまなんて、人間もたないでしょう。声が出せるならやっぱり出しちゃうし、人がいたら話しかけますよ。それなのに愛だけは気づかれなくても伝わらなくても平気なんて道理、あります?伝えられない、ってェのはあると思いますがね、伝わらなくていいなんて、自分への慰めか誤魔化しですよ」
違いますか、と尋ねられて、青木は何とも答えられずに少し目を伏せた。
何とも、憑き物落としの古本屋の様な真似事をする。彼に比べて筋道も順序も無ければ圧倒的な説得力もないけれど、自らの内側に澱のように積もり重なっていたものを掻き回すくらいの力はあったようだ。
「君は、どうなんだ」
青木が漸く返せた言葉は随分と苦し紛れで、それは益田にも伝わってしまったらしく笑われる。常とは異なる、呼気に笑みを逃した柔らかな笑い方。
「僕は卑怯ですから、いっぱい喋って喋って、言いたい事を紛れ込ませて押し付けちゃいますね。相手からしたら迷惑なんでしょうか」
そろそろ出ましょう、と益田は立ち上がる。少し遅れた青木の分も一緒に会計を済ませて、一足先に夜の街へするりと抜け出てしまう。
その後ろ姿を追って暖簾をくぐると、夏の夜の温い風が髪を撫でて行った。
「僕ァね、伝えて拒まれて逃げられるくらいなら、伝えないで傍に居られる方が良いと思う質でして。上手くいくとは始めから思っちゃいないんですよゥ、…でも、今回は、あ、わゎッ!」
街灯の下、光の輪の中で立ち止まり、青木を振り返る益田は楽しそうに笑っていて、その長い前髪に蛾が止まって何やら悲鳴めいた声と共に灯りから逃げる。
その慌てた様があまりにもいつも通りの情けないもので、青木は遂に吹き出してしまう。
「アァ、酷いなあ笑わないで下さいよ」
「いや、君には敵わないよ」
もう何も付いていない前髪を何度も払いながら恨みがましい声で咎める益田に、空いた距離を縮める為に街灯を越してその細身に対峙する。
「どうしてくれるんだい、さっきまで僕は恋をしていたのに」
「オヤ、僕の言葉程度で揺らぐなら、そりゃ気づいてなかっただけですよ」
只の好意は執着へ、単なる懸想は依存へと。
押し上げられてというべきか引き上げられてというべきか、兎に角目の前に立つ卑怯者の所為でそれは本来の形を知ってしまい、それを早速見せつけるように青木は益田の腕を掴む。
「さて、責任を取ってもらおうかな」
「いいですねェ、まずは飲みなおしましょうか」
益田の目尻に朱が差しているのは、きっと酒に酔っているからだ。
青木の耳に集まる熱も、そうきっと。
毎回一人称や他視点とか、文章の書き方が一番苦しいです。
何本かいても展開一緒なんだなーと気付いてしまったのでもうどうでもよくなってきましたorz
だいたいどっちかが照れたり抱きしめたりとか。もうええっちゅうねん。
初めての青益青です。
たまには両想いの二人が見てみたくてwwwww
アルコールで気の大きくなったらしい益田が、顔を赤くして居酒屋の卓上に拳を叩きつけた。
その大きな声と思ったより店内に強く響いた殴打音に、未だ素面に近い青木は益田の言葉に返事をするでもなく店主に目を向けて身内の騒々しさを軽く頭を下げることで謝った。
そんな青木の気配りには気づかない益田が、それでも自分の話を聞いてもらえていないことは気づいたらしく、卓をはさんで向かいに座る男の腕を掴んで構われたがる子供のように揺すっている。
「聞いてますか青木さあん、恋ってのはですねェ、遠くからそっと見つめるだけで幸せになるとか、部屋で一人想い人の事を考えて身悶えるとか、そう云う経過にこそ楽しみがあるんですよう、解りますかあ」
「そうだねぇ、学生の頃にはそういう青い思い出もあったかな」
半ばうんざりとした口調で返しても、そうでしょうそうでしょうと満足そうにうなずく益田はいつもより酒の周りが早いような、否、明らかに早すぎる。
「つまり、若さなんですよ恋は。若いからエネルギイに満ちてて、気ばかり大きくなっているから現実的なことが考えられなくて、だから懸想が甘くて楽しいんですよ」
まるでそれを悪い事とでも云うように唇を尖らせて、箸で皿の淵をカチカチと叩きながら益田は唸る。
行儀が悪いよ益田さん、と窘めると子供のようにじとりと上目使いに見つめられた。
なんだかその表情は見たことがある気がして、ああそうだ、幼い頃実家で飼っていた柴犬が散歩に連れて行って欲しそうな時の瞳に似ている、と思い当って青木は思わず浮かぶ笑みに目を細めた。
「何だい、ちゃんと話は聞いてるだろう。そう不服そうな顔をしないでくれよ」
「だって青木さん、全然ノッてくれない」
当たり前だ。
片や完全に出来上がっている酔っぱらい、片や未だアルコールに麻痺していない素面。鳥口あたりなら十分に共に盛り上がることもできただろうし、あの榎木津ならば上をいく躁にこの酔いも醒めてしまう事だろう。
しかし青木は真面目過ぎる節があると事ある毎に様々な人から宣告されるほど、要は野暮なのだ。
「君の恋愛観を聞かされてもね。君の言だと楽しくなければ恋愛じゃないんだろう」
「違いますよゥ、恋愛じゃなくって、恋です、恋。愛はまた別なんですってば」
人差し指を振りながら益田がわざと眉をしかめて怒っているような表情を作る。
「恋は、『自分だけ』楽しいんです。相手に伝わっていようといまいと関係無いんですよ。だって懸想している事実が大切なんですから。好きである事、それが相手に受け入れられたらまた色々話は変わってきますけどね、つまりは只の自己陶酔なんですよ、だから若くないとそこまで楽観的に構えてられない」
ケケケ、とお馴染みの薄気味悪い笑い声を立てる益田は、その眼差しだけは冷めている様に見えて、青木はオヤと目を瞬かせた。
矢張り益田はそれ程酔ってはいないのかもしれない。それならば、青木は卓に肩肘をついて僅かに身を乗り出すように傾けた。
「…それなら、愛は君の中でどういうものなんだい」
水を向ければ、益田の瞳が驚いたように青木をとらえた。すぐに浮かべられる笑みには居心地の悪さすら覚えて、青木は自ら前に出ていた体を戻して背もたれに預け直す。
「愛ですか、愛はですねェ、一方通行の依存と執着ですね」
「なんだ、恋と変わらないじゃないか」
勿体ぶった割に肩透かしを食ったような気分で青木が呆れた声を上げると、全然違いますよゥ、と益田は頬を膨らませて拗ねた。良い年した男が見苦しいと思ったが、見過ごすのも優しさと何も云わずにおいた。
「いいですか、恋は自己陶酔ですよ。身近な存在じゃなくても、それこそ相手が本当は存在していなくたって出来るんです、映画に出てる美人女優だとか、物語の王子様だとか」
成程、恋に恋をするとも言うし、確かにそこには自分の妄想の中だけの恋人、さぞかし楽しいのだろう。…興味は持てないが。
青木の微妙な表情に気づいた益田はわざとらしく口元を揃えた指先で隠すように笑って吊り気味の目を細めた。
「青木さんには似合わないなあ、夢見るお姫様って柄でもなさそうだし」
「勘弁してくれよ、気持ち悪いなあ」
すっかり温くなった冷奴に箸を突き刺して、その白い肌が崩れる様を見下ろしながら青木は溜息をつく。益田が酔った振りまでして突然始めた弁舌に、正直の所戸惑っていた。
相談したいことがある風でもなく、ただつらつらと己の恋愛観を語る男に、一体どういう顔をし続ければいいというのだろうか。
「話を元に戻しますとね、愛は依存と執着なんです、相手が居ないと成り立たない。依存ってェのはこの場合その存在があるという事が自分の基盤に深く浸透しちゃってる、しかも執着までしてしまうものだから相手に及ぼす影響もあるんですよ」
「しかし、愛とは無償の好意とか説いてる人もいるだろう」
「アッハハ、ないない。有り得ないですって。無償って、見返りを求めないとか、まあただ想い続けるだけってことですよね?そりゃあ恋です、僕の理屈から言うとですがね」
益田は興に乗ってきたらしく、当初の気だるげに語尾を伸ばす口調も忘れ完全に素面の瞳でコップに残っていた安酒を煽った。
青木はと言えばそんな益田の変わり身に口をへの字にして黙したまま、再び益田の独壇場へと引きずり込まれていく。
「喋れるのに黙ったまんまなんて、人間もたないでしょう。声が出せるならやっぱり出しちゃうし、人がいたら話しかけますよ。それなのに愛だけは気づかれなくても伝わらなくても平気なんて道理、あります?伝えられない、ってェのはあると思いますがね、伝わらなくていいなんて、自分への慰めか誤魔化しですよ」
違いますか、と尋ねられて、青木は何とも答えられずに少し目を伏せた。
何とも、憑き物落としの古本屋の様な真似事をする。彼に比べて筋道も順序も無ければ圧倒的な説得力もないけれど、自らの内側に澱のように積もり重なっていたものを掻き回すくらいの力はあったようだ。
「君は、どうなんだ」
青木が漸く返せた言葉は随分と苦し紛れで、それは益田にも伝わってしまったらしく笑われる。常とは異なる、呼気に笑みを逃した柔らかな笑い方。
「僕は卑怯ですから、いっぱい喋って喋って、言いたい事を紛れ込ませて押し付けちゃいますね。相手からしたら迷惑なんでしょうか」
そろそろ出ましょう、と益田は立ち上がる。少し遅れた青木の分も一緒に会計を済ませて、一足先に夜の街へするりと抜け出てしまう。
その後ろ姿を追って暖簾をくぐると、夏の夜の温い風が髪を撫でて行った。
「僕ァね、伝えて拒まれて逃げられるくらいなら、伝えないで傍に居られる方が良いと思う質でして。上手くいくとは始めから思っちゃいないんですよゥ、…でも、今回は、あ、わゎッ!」
街灯の下、光の輪の中で立ち止まり、青木を振り返る益田は楽しそうに笑っていて、その長い前髪に蛾が止まって何やら悲鳴めいた声と共に灯りから逃げる。
その慌てた様があまりにもいつも通りの情けないもので、青木は遂に吹き出してしまう。
「アァ、酷いなあ笑わないで下さいよ」
「いや、君には敵わないよ」
もう何も付いていない前髪を何度も払いながら恨みがましい声で咎める益田に、空いた距離を縮める為に街灯を越してその細身に対峙する。
「どうしてくれるんだい、さっきまで僕は恋をしていたのに」
「オヤ、僕の言葉程度で揺らぐなら、そりゃ気づいてなかっただけですよ」
只の好意は執着へ、単なる懸想は依存へと。
押し上げられてというべきか引き上げられてというべきか、兎に角目の前に立つ卑怯者の所為でそれは本来の形を知ってしまい、それを早速見せつけるように青木は益田の腕を掴む。
「さて、責任を取ってもらおうかな」
「いいですねェ、まずは飲みなおしましょうか」
益田の目尻に朱が差しているのは、きっと酒に酔っているからだ。
青木の耳に集まる熱も、そうきっと。
毎回一人称や他視点とか、文章の書き方が一番苦しいです。
何本かいても展開一緒なんだなーと気付いてしまったのでもうどうでもよくなってきましたorz
だいたいどっちかが照れたり抱きしめたりとか。もうええっちゅうねん。
初めての青益青です。
たまには両想いの二人が見てみたくてwwwww
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