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バカップル榎益榎。一生やってろ的な…
唇が触れ合うだけで涙が出そうになってしまった。それほどに僕という形の皮膚の下では熱が渦巻いていた。
少しでも動けば膨張した感情が皮膚を破裂させて辺り一面に飛び散ってしまいそうな気がして、肩を押し戻されるまで呼吸すら出来ずに身を固めていた。
「……女学生じゃあるまいし、そこまで固くなるな」
顔が離れると二つの体は身長差という隔たりを思い出して、声は上から落とされる。体格というルールを思い出しながら僕は少し顎を上げてその御姿を仰いだ。
「女学生とした事あるんですねェ、いやらしいなあ」
「馬鹿」
緊張と興奮で喉がカラカラに乾いていて、声が僅かに震えてしまう。同時に頭の中では女学生というフレエズが妙に蠱惑的に響いて、ああ目の前に立つ凛々しく美しい人が愛らしいおさげの女の子に口付ける様はきっと綺麗なのだろうなあ等と考えていたらその視界の中で麗人が僕に向かって笑う。
「嬉しそうな顔をするな」
眉間に唇が押し付けられ、柔らかい愛撫がくすぐったくて肩をすくめる。だってそれは、今貴方は僕を見てますから、と呟けばその答えはお気に召したのか、馬鹿だなあ、と酷く優しく笑われた。
念ずれば通ず、とでも言うのだろうか。僕が彼を愛しくて愛しくて仕方がないこの気持ちは、寸分も違わず伝わるらしく、実際僕は主人が大好きで仕方ない犬のようなものなのだ。
ぶら提げたままの手に彼から指が絡められる。暖かくて、少し湿っている。
初めて気付く。もしかして、彼も緊張しているのだろうか。
「榎木津さん」
祈るように絡めた指を握りしめ、吐息に隠すようにして名を呼べば彼の口もとに笑みが浮かんだ。ゆっくりと唇が開いて。
「れいじろう、だ」
「 え」
ぽかんと彼を見上げれば片眉を寄せて訝しむ様な目を向けられて、繋いだ手を少し引かれ体を無理に密着させられた。
「名前を忘れていたなんてことはないだろうな」
「ま、まさか」
アンタじゃあるまいし、という言葉は押し込めて、それでも求められた事に応えるだけの勇気が出ずに目が泳いでしまう。
名前で呼ぶなんて。
僕の知る限り、彼の名を呼ぶ事ができるのは彼の幼馴染である木場修太郎と親族の方々くらいで、もしかすると安和寅吉なんかも先生と呼ぶより以前は名前で呼んでいたのかもしれないが、それでも極僅かである。
しかもそこには、彼を幼少時代から知る者達という、僕なんかでは到底敵わない時間量を共にしてきた人達ばかりの、要は僕なんかが簡単に口にできる気やすさではない。
「呼ばないと僕はもう寝てしまうよ、アァ今日も一日疲れたなァと」
「ま、待って下さい、その。ああ…れいじろう、さん」
彼は軽い調子で宣言するとあっさり身を離そうとして、指が離れていくのに焦った僕は失語症一歩手前になりながらどうにかこうにかその言葉を口にする。
告白する時以上に緊張して声が震えてしまいながらも、一度声に出してしまえば嬉しさにじわじわと口元が緩んできてしまう。
「…れいじろうさん、礼二郎さん」
「ふふ、変な顔」
一度口にした単語に取り付かれ、何度も繰り返し呼んで顔を赤くしながらにやける僕に、ほんのり目元を染めて彼もやっぱり笑いながら囁いた。
「礼二郎さんも、呼んでください」
頬ずりしようと顔を寄せ、それは身長差の所為で首筋になってしまうけれど、唇をあてたところから脈の打つ振動を感じて、その速さに目を閉じる。
「ね、礼二郎さん。僕の名前は覚えてますか?」
「……龍一」
僕の揶揄う言葉に、僅かな間の後紡がれる名前。今までに聞いたどの声よりも興奮させられるなあ、なんてふしだらな考えが過ぎってしまう。
きっとそれは、唇に感じる鼓動が僕のそれに負けないくらいに早まっている所為もあるかもしれない。
call me 的な。きっと題材としてやりつくされてますよ、ね…
益榎エロのつもりで書いてたんですが、途中からこれはエロくならんぞ、と気付いてしまいまして。急遽変更。
二人ともイニシャルがRなんですね。今気づきました。
末っ子は益田君童貞説を推していきたいと思いますwwww